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2001-2003|

ロスのイスキア誕生

「美津子さんがされている活動をロスのイスキアとして続けてほしいと思って、今回はそのお話もしたいと思って参りました」
初女さんから突然そういわれて、私は言葉を失った。
初女さんが今まで何十年間と続けてこられた活動、「イスキア」という思い入れのある名前。それを「ロスのイスキアとして・・・」といってくださるけれど、私にはそれを受け取れるだけのものはないと思う。しばし、私は沈黙しうつむいてしまった。その答えをきちんを初女さんにお伝えできぬまま、数日が過ぎていった。
私の中では「ロスのイスキア」と言う言葉がずっと心の中にあった。

今回は講演会だけでなく、我家に初女さんをお招きしての「イスキア再現」とした小さな会を企画した。初女さんのお料理とお話を直に聞け、味わえるこの贅沢なチャンスは私がチラリとインフォメーションを入れたとたん、予約が一杯になった。
イスキアは丸いテーブルを囲むのだが、うちには丸テーブルはないし、ちゃぶ台もない。テーブルを正方形に2つ並べて、仕上げたスタイルだったけれど、みんなで和が作れ、初女さんの静かで深いお話を聞き入った。
初女さんは早々に我家に準備に入られ、まず「美津子さんにおだしのとり方をお教えしたいと思って、うちから焼きぼしを持ってきたの」「やきぼし???初めて、聞きました」と、私。
1kgあたり1万円もするという。きゃ〜〜!初女さんはゆっくり焼きぼしをほぐし始めた。なんとも丁寧な作業。

「しばらく水につけておいてください」「味が出たら、こぶを入れますよ」昆布の量はかなり多かった。どっさりと入った昆布と焼きぼしでとれだおだしは透明で、すごく贅沢なお味だった。
出し昆布は少し味付けして、昆布の佃煮として作ってくださった。
乾燥貝柱も今回は初女さんが持参してくださり、そのほか、丹波の黒豆や菊の花の乾燥、青森の胡桃なども持ってきてくださった。
今回初女さんが考えられたメニューは
ちらし寿司、貝柱のオニオンスープ、菊の花の酢の物、キャベツの炒め物、くる実入りにんじんの白和え、りんごのコンポート、黒豆おこわ たくさんのメニュー!!これだけ作ろうとされたのですよ。驚きました。
特に黒豆おこわは初女さんのお母様、おばあちゃまからずっと伝わるお料理で、「是非、これをお教えしておきたいの」と言ってくださった。 こちらは時間の関係で前日から準備をし、クラスの前に個人的に教わったので、これから私がしっかりとみなさんにお伝えしていこうと思っている。

お味は最高で、炊き上がりにお酢を入れるので、ご飯の色がきれいなのだ。お赤飯にも似ているが、色は薄紫とピンクの中間といった感じになる。
蒸し方、蒸し器にお米をいれる、蒸しあがったご飯を取り出す作業、全てが美しく。やさしい。

「初女さん、お台所にたたれると、いつも以上に生き生きされますね!」というと「そうよ。だって、命だからね」と答えられた。
そうなのだ。台所で初女さんは命と対話し命とかかわっておられる。その食からの命の交流がまた初女さんに流れていき、どんどんとゆったりとした初女さんの動きの中に生き生きとした躍動感と喜びが伝わってくるのだ。
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参加者は一つ一つの工程を丁寧に行う初女さんに驚きと感動を持って見ておられた。そして、参加者のみなさんもいつも以上に丁寧ににんじんの皮をむき、

胡桃を一つずつ手にとり、その皮をむいていく。春雨をゆでる時は、春雨がお鍋の中でばらばらにならないようにゆったりと紐をまかれ、お湯の中で春雨がゆらゆらと踊るようにゆでられ、すくい上げられていく。これは「美」の世界です。

私は以前、イスキアに伺った時に初女さんからすりこ木を頂いていた。見事なすりこ木で、我家の家宝になっている。今回、是非初女さんのすりこ木を使う姿を見せていただきたく、くるみも持参してくださり、念願の姿が我家で見ることができた。すりこ木にそうように、力を入れすぎず、まかせてゆったりと胡桃がすり鉢の中でさらさらになっていく。命がつぶれない、命をしっかり見守りながら、初女さんの愛で胡桃が命を変化させてくれている。これからは、もっとこのすりこ木を使わせていただこうと心した日だった!

こうして、沢山の初女さんの愛のこもったお料理が食卓を並べた。この写真以外にスープもおこわもりんごのコンポートもあるのですが、どうですか?春がやってきたような、やさしくてきれいなお料理ですね。私たちがどんな気持ちでこのお料理を頂いたかは、申すまでもないと思いますが、私たちが初女さんから教わったことは材料のさじ加減や分量ではなく、命を大事にはぐくむという姿勢。料理の中にどれだけ命を生かしきるかというその愛の世界だった。この愛の行為があるからこそ、初女さんの元には人が訪れられ、初女さんのお料理を頂、その愛を感じさせてもらわれるのだろう。
みんな愛にふれたい。おいしいという喜びの食を通じて愛に触れられたら、その記憶は一生消えない。幼い時にお母さんからこの愛を「おいしい」という喜びの食卓から受け取った子供に非行が起こるだろうか。私は絶対に起こらないと思う。
だって、それは言葉以上に細胞に記憶されるから、愛されている記憶。愛があるという記憶。
その記憶は絶対に消えないと思う。

私は3年のお付き合いで、前より少し深く感じる初女さんのことがあった。
それは「初女さんは透明な人」だと言うことだ。彼女が人の話を聞く時、彼女は透明になると私は感じた。だからこそ、初女さんと一緒にいる時間は長い短いは関係なく、たとえ数分でも人の心が満ちるのだ。それは、その人と向き合っている時、初女さんは透明になり、相手の全てを受け入れる、魂の深いところまでその透明の愛によって触れられる。だからこそ、人は自分の深い部分が解放され、それを初女さんに受け入れてもらえ、心が安心し癒され、自ら答えを出し始める。
私はこの感じるままを初女さんに伝えた。すると初女さんは「ここをね(胸に手をあてて)空っぽにするっていうことなの」と、言われた。 彼女は人と接する時、人の話を聞く時、完全に自分を手放し透明に空っぽになられるのだ。自分の意志を一旦手放して、相手を受け入れることはとても難しい。人の話を聞いているようで、多くは自分の思いをもった上で人の話を聞く。人の思い以上に自分の思いが出てきたりもする。たとえカウンセラーと言われるプロでも、そういうことはあると思うのだ。聞いているようでも、本当に人の思いが聞けるというのは、一旦自分を手放さないとできないと思う。
そして、相手の魂の深いところからの声が出てくるのを待つ。そこに相手への信頼。その人の中に神が宿っていると100%信じておられる初女さんの生き方があると思った。
みんな、自分で自分の答えをもっているし、知っている。その自分の声が出るのを初女さんは静かに透明になって一緒に待ってあげられる人なのかもしれない。私自身、初女さんとご一緒してそう思ったのだ。
「今日はロスのイスキアスタートの日。」と言ってくださった初女さんの思いを有難く受け止め、私は私として初女お母さんの愛を感じ続けよう。

この日も我家に時々顔を出される玉響が参加者の方の胸にしっかりと姿を現した。全ての命が響きあい、感じあえた大事な日となった。


初女さん 2004年 in LA
3回目のロスでも益々お元気です!

台風の中、ハプニングと神業の両方で初女さんはお元気にロスにご到着された。 ホテルに到着して、開口一番は、3年前と同じ言葉だった。「美津子さん、今回も私のプライベートな時間をとることを考えないでくださいね。観光も私は必要ありません。みなさんにお目にかかりに精一杯のことをさせてもらうためにきましたので、お願いします」

いつもながら、初女さんはこのようにおっしゃる。自分の全てを捧げ、精一杯の事をする中で生きておられる姿に改めて感動した。
「来る、飛行機の中で、3年前にもらった美津子さんからの手紙を読んでいました。あの時から始まったなぁと、思いながら。美津子さんは私に約束してくれました。この活動をアメリカに広げて行きたいと。食の大切さをアメリカに伝えて行きたいと。そして、本当に今、そうなってきました。どんどん広がって・・・ありがたいと思っています。」

飛行機の中で3年前に出した私の手紙を読み返してくださっていた初女さん。なんだか目頭熱くなってしまった。
人の思いを大切に大切に汲み取ってくださる初女さんの気持ちはたとえどんなに短い時間でも人を癒しきる力となると、私は思う。
相手を見る、その見方が深く、温かく、静かなのだ。染み込むように人の心を見てくださる初女さんだからこそ、人々は初女さんを尋ね、初女さんのそばにいたいと思うのかもしれない。
到着されたその日の夕食会。初女さんは益々つややかに見えた。私はそばにいてドキリとするほどだった。84歳・・・この中から湧き出すエネルギーと光はどこからやってきているのだろう。私は見とれてしまった。
日本から同行されたお客様が5名。にぎやかな食卓をご一緒させていただいた。この日は友人のすし職人のけんさんのご協力で新鮮なお魚を使ってのおすしパーティーとなった。少々お酒も召し上がり、初女さんのほっぺもほんのりと色づき、う〜〜ん、お・き・れ・い!
日本でも初女さんの活動に賛同し自らも癒しの場を作り始め、それぞれが活動を始められていた。こうして初女さんの魂が広がっていくのだな・・・

夕食後「りんごのコンポートの作り方をお教えしておきましょうね」と言われる。「お昼に食べようと思ってむいていたりんごで作りましょう。とても簡単でおいしいからね」と、初女さん直伝のデザート講習を受けさせていただくことになった。ワクワク!


我家の台所に初女さんが入ってこられ、りんごの煮具合を見てくださる。落し蓋はお皿!お鍋にぴったりおさまる平らなお皿を初女さんはいつも落し蓋として使われるそうだ。「これをちょっと圧をかけて、しっかりとかぶせるとね煮崩れもしないで、きれいに出来上がるのよ」
甘酸っぱいりんごのコンポートはこれからの私のお気に入りの一品になりそうだ!

ご到着早々、全くお疲れを見せず生き生きとつやつやとされる初女さんと再会し、私までエネルギーが回ってくるようだった。
これからの4泊5日は「初女さん時間」穏やかにゆっくりと全てが流れていくだろう。